現在、特定非営利活動法人EnVision環境保全事務所では、
人とヒグマの新しい未来を目指し、ベアドッグ導入プロジェクトに挑戦しています。
ご支援・シェアで応援をお願いいたします。
TSUNAGUでは、EnVisionさんに今回のベアドッグ導入に込めた思いや、
ヒグマとの向き合い方が問われる今、多くの方に知っていただきたい内容です。
「インタビュー記事はこちら」

この度、クラウドファンディングに込めた思いや、ベアドッグ導入への期待、
そして人とヒグマの未来について、プロジェクトに携わる皆さまにお話を伺いました。
なお、プロフィールの詳細はクラウドファンディングページでご紹介されていますので、
本記事では省略させていただきます。
① 特定非営利活動法人EnVision環境保全事務所 理事長 赤松 里香 様
② 特定非営利活動法人EnVision環境保全事務所 研究員 早稲田 宏一 様
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第一歩の背景
「なぜ今、北海道にベアドッグなのか」人とヒグマの新しい未来への第一歩
――クラウドファンディングのプロジェクト概要にも丁寧なご説明がありますが、
もう一度今に至るまでの経緯と思いをお聞かせください。
(早稲田さん)
実は、ベアドッグに興味を持ったのは今から25年ほど前。
当時アメリカのWRBI(Wind River Bear Institute)を訪れた際にベアドッグを実際に見て、
「いつか北海道でも活躍できるかもしれない」と感じました。
それ以来ずっと情報収集と交流を続けてきました。
――25年前からですか。それだけ長い期間、思い続けてこられたのですね。
(早稲田さん)そうですね。
ただ、その頃は導入したくても現実的ではありませんでした。というのも、
当時の北海道ではヒグマ問題が今ほど社会的な課題になっていませんでしたし、
ベアドッグの能力を生かせる現場や仕組みも十分にありませんでした。
優秀な犬を迎えたとしても、その活躍する場所がありませんでした。
(早稲田さん)はい。
私たちは近年、札幌市をはじめとするさまざまな調査業務に携わる中で、
「ベアドッグがいれば次のステップに
進める」という場面を多く見るようになりました。
さらに、社会全体でもヒグマへの関心や不安が高まっています。
クマが出没したというニュースを見るたびに、
「怖い」「どうしたらいいのかわからない」
と感じる市民の方は少なくありません。そうした不安に対して、
ベアドッグは単なる犬ではなく、
人とヒグマの間に立つ新しい選択肢になれると思っています。
(早稲田さん)そう思います。
そして、今回の挑戦にはいくつもの偶然が重なりました。
長年交流を続けてきたアメリカのWRBI(Wind River Bear Institute)が
ちょうど繁殖のタイミングを迎えたこと。
そして、ベアドッグハンドラーでもあり、その育成に携わる田中さんから直接指導を
受けられる環境が整ったこと。さらに、私たち自身も札幌市を中心とした取り組みを通じて、
ベアドッグを活用できる土台が少しずつ見えてきました。いろいろな条件が重なって、
すべてのピースが揃った「今だ」と思えたんです。
(早稲田さん)その通りです。
正直なところ、ベアドッグが北海道でどのように活躍し、
どんな仕組みが必要になるのかは、
実際にやってみなければ分からない部分もあります。
だからこそ、まずは自分たちで挑戦してみたい。
長い目で見ながら、北海道の中でベアドッグという技術をどう育てていくのか。
その第一歩が今回のプロジェクトだと思っています。
――ベアドッグは、将来的にはどのような場面で活躍できると考えていますか。
(理事長)
今は調査の補助や安全確保が主な役割になると思っています。
ただ、私たちが見据えているのはもっと先の未来です。
北海道にはヒグマが生息しており、その環境の中で暮らし、
仕事や活動をしている方がたくさんいます。
例えば、農家の方々、林業で山に入る方々。警察や関係機関の方々。
あるいは自然ガイドの皆さんもそうです。通学路を見守る方々。
そうした方々や住民の方々の安全を守るために、ベアドッグが
力を発揮する場面はきっとたくさんあるはずです。
人が自然と共生するためにベアドッグの活躍の場を作っていきたいと思っています。
(理事長)そうですね。
だからこそ、その将来を考えても「いつか」ではなく、「今」踏み出すべきだと思いました。
むしろ、もしかすると少し遅かったくらいかもしれません。
もちろん、現時点ではまだ分からないこともたくさんあります。
ベアドッグが北海道でどのように機能するのか。
私たちが思い描いているような未来は本当に実現できるのか。
それは実際に犬を迎え、現場で活動しながら確かめて、つくり上げていくしかありません。
(理事長)まさにそうです。
私たち自身、北海道でベアドッグを活用した経験はありません。
だからまずは自分たちで使い、その可能性と課題を一つひとつ検証していきたいと思っています。
そして、その経験を通して見えてきたものをもとに、必要な技術や人材育成の仕組み、
運用体制を整えていく。ベアドッグを一頭導入して終わりではなく、
その先にある北海道ならではの仕組みづくりまで見据えています。
今回のプロジェクトは、ベアドッグを迎えることが目的ではありません。
人とヒグマが共に暮らしていくための新しい可能性を探る、その第一歩だと思っています。
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なぜカレリアン・ベア・ドッグだったのか
――今回導入するベアドッグは、まずヒグマの痕跡調査や存在確認に活用すると伺っています。
(早稲田さん)そうですね。
私たちがまず活用したいと考えているのは、「探索」の能力です。ベアドッグというと、
ヒグマを追い払う犬というイメージを持たれる方も多いと思いますが、現時点では追い払いを
主目的にしているわけではありません。
もちろん将来的な可能性としては検討しています。ただ、軽井沢や海外の事例と北海道では
環境や条件が大きく異なりますので、本当に安全に実施できるのかはまだ手探りの部分があります。
まずは犬を導入し、経験を積み重ねながら、少しずつ可能性を探っていきたいと思っています。
――では、まずは探索能力が大きな役割になるのですね。
(早稲田さん)そうです。
実は探索能力だけでも活躍できる場面はたくさんあります。
例えば札幌市では、「クマが出たらしい」という通報が入ったとき、
本当にヒグマなのか、まだ近くにいるのか、それともすでに移動した後なのかを
判断することが重要になります。
しかし、その情報が分からないことで地域の皆さんが大きな不安を抱えることも少なくありません。
そんな時に、ヒグマの痕跡や存在を確認できるベアドッグの能力が役立つと考えています。
――数ある作業犬の中で、カレリアン・ベア・ドッグを選んだ理由は何だったのでしょうか。
(早稲田さん)
もちろん探索能力そのものは、他の犬種にも優れた犬はいます。
ただ、私たちが大切にしたのはその能力だけではありません。
カレリアン・ベア・ドッグは、人とのコミュニケーション能力にも優れています。
地域の方々に親しみを持ってもらいやすく、人とヒグマをつなぐ存在になれる可能性を持っています。
私たちは単に調査をしたいわけではありません。
地域の皆さんにベアドッグの役割や意義を理解してもらいながら活動を進めていきたい。
そのスタートとしては、カレリアン・ベア・ドッグが最も適していると考えました。
(田中さん)はい。私も同じです。
もし最終的な目標が、人とヒグマの双方にとってより良い関係をつくることだとしたら、
探索だけではなく、人とのコミュニケーションも、ヒグマとのコミュニケーションも
できる犬が理想です。これまでさまざまな犬種を見てきましたが、
その点でカレリアン・ベア・ドッグは非常に優れた犬種だと感じています。
――一方で、ベアドッグの能力を引き出すためにはハンドラーの存在も欠かせないそうですね。
(田中さん)
むしろ、犬だけでは何もできません。
作業犬というと犬が主役に見えますが、実際にはハンドラーが野生動物の行動を予測しながら
現場を判断し、犬を導いています。
例えばヒグマを探す場合でも、どこにいる可能性があるのか、どのルートで移動するのか、
どう接近すれば安全なのかを考えるのはハンドラーです。
ですから、ヒグマに関する知識や経験は欠かせません。
――犬の訓練技術だけでは足りないということですね。
(田中さん)その通りです。
犬のトレーニングはもちろん大切ですが、それ以上にヒグマや地域のことを理解していることが重要です。
札幌市で活動するのであれば、札幌市で長年ヒグマ対策に携わってきた
早稲田さんのような方は理想的なハンドラーだと思います。
実際、アメリカのベアドッグ育成でも「まずクマを知る人であること」が重視されています。
――ハンドラーには、どのような資質が求められるのでしょうか。
(田中さん)
実は、この考え方はベアドッグプログラムを運営しているWRBI(Wind River Bear Institute)の創設者、
キャリー・ハントさんが一貫して大切にしてきたことでもあります。
キャリーさんがハンドラーを選ぶ際にまず重視するのは、「クマを知っている人」であることです。
地域で長くクマに関わってきた人。その土地のことを知り、クマの行動や生態を理解している人。
そうした人がベアドッグのハンドラーとして最も適しているという考え方です。
その意味では、長年札幌でヒグマ対策に携わってきた早稲田さんのような存在は、とても理想的だと思います。
――では、ヒグマや地域の知識・経験以外に、キャリーさんがこだわっていることはありますか。
(田中さん)
やっぱりパッション(情熱)でしょうね。
犬もヒグマも生き物です。
だから単に技術があるだけではなく、生き物に対する配慮や責任感を持てる人であることが大切です。
キャリーさんが一番大切にしているのは、
「人も、ヒグマも、犬も、みんなが安心・安全に活動できること」です。
逆に言えば、そのバランスが崩れてしまうと、この取り組み自体が成り立たなくなってしまいます。
例えば事故が起きたり、犬が人を傷つけたり、あるいは犬がヒグマに傷つけられたりするような
ことがあってはいけません。
だからこそ、人への配慮だけではなく、ヒグマや犬への配慮も含めて考えられる人がハンドラー
として求められているのだと思います。
(田中さん)そうですね。
ベアドッグは道具ではありません。
命あるパートナーです。
だからこそ、犬と一緒に学び、成長しながら活動していく覚悟や情熱が必要だと思います。
――まさにベアドッグとハンドラーは相棒のような存在ですね。
(田中さん)そうですね。
ベアドッグは単なる道具ではありません。
お互いを信頼しながら活動する「バディ(相棒)」です。
だからこそ技術だけではなく、人と犬、そしてヒグマへの思いや責任感が何より大切なのだと思います。

人とヒグマの新しい未来を創る一歩
――今回のクラウドファンディングでは、「人とヒグマの新しい未来を創る一歩」
というメッセージが掲げられています。
このプロジェクトによって、どのような未来を目指しているのでしょうか。
(早稲田さん)
私たちは、人とヒグマがお互いを尊重しながら共に暮らしていける未来を目指しています。
もちろん、すべてのヒグマを救えるとは思っていません。
場合によっては捕獲しなければならない個体もいますし、駆除がゼロというのは難しい。
ただ、今の状況を見ていると、「ヒグマが出た」「怖い」というイメージだけが先行
してしまっているように感じます。そして、そのまま捕獲されてしまう。
地域の方もヒグマに対してネガティブな印象だけが残ってしまう。
――その状況を変えるために必要なことは何でしょうか。
(早稲田さん)
私は「見える化」だと思っています。
今、そのヒグマは何をしているのか。
なぜそこに現れたのか。
どんな行動をしているのか。
まずはそこをきちんと知ることが大切です。
例えば、その個体が生ごみや果樹など、人間側の要因によって引き寄せられているのであれば、
地域で対策することで出没を減らせるかもしれません。
一方で、どうしても捕獲が必要なケースもあるでしょう。
大事なのは、感情だけで判断するのではなく、状況をきちんと把握し、
地域の皆さんと共有した上で判断していくことだと思っています。
(早稲田さん)そうです。
ベアドッグには探索能力があります。
痕跡を見つけ、DNA分析につながるサンプルを探し、
ヒグマの行動を知る手がかりを集めることができる。
私たちはまず、その能力を活用したいと考えています。
ヒグマを知ること。
そして、その情報を地域に伝えること。
そのための大切な役割を担ってくれる存在だと思っています。
ヒグマも一頭一頭で行動や性格が異なります。
しっかりとその個体を知ることで、できる対策の選択肢も増えるはずです。
その結果として、駆除ではない方法で対応できるケースが増えるかもしれません。
(早稲田さん)まさにそうです。
私の中には「つなぐ」というキーワードがあります。
猟友会の皆さん。
地域の皆さん。
行政。
そして研究者や科学的なデータ。
今はそれぞれが別々に存在している部分もあります。
その間をつなぎ、お互いが同じ情報を共有しながら考えていける環境を作りたい。
ベアドッグは、そのきっかけになれる存在だと思っています。
――10年後、「導入して良かった」と思えるのはどのような状態でしょうか。
(早稲田さん)
正直に言うと、この取り組みは10年、20年かかるプロジェクトだと思っています。
北海道の開拓の歴史の中で、人とヒグマの関係は長い時間をかけて形づくられてきました。
それを一気に変えることはできません。
だからこそ、少しずつ変えていくしかない。
今回のプロジェクトは、そのための本当に小さな第一歩です。
でも、その一歩がなければ未来は変わりません。
私自身、これまで積み重ねてきた経験や知識を、
この10年、20年で次の世代につなげていきたいと思っています。
そして、人とヒグマの関係について、今まで見えなかったことが見えるようになる。
そんな変化が生まれたらうれしいですね。
――理事長は、この取り組みにどのような期待を持っていますか。
(理事長)
ベアドッグの導入によって、人と自然のかかわり方に新しい可能性が見えてくると思っています。
例えば、市民の皆さんの意識が変われば行政も変わります。
行政が変われば、また地域の取り組みも変わる。
そうやって少しずつ社会は動いていくものだと思うのです。
今の状況も、北海道の開拓の歴史やこれまでの積み重ねの中で生まれてきたものです。
だから未来もまた、今の私たちの選択の積み重ねで変わっていくはずです。
ベアドッグが来ることで、これまで見えなかったものが見えるようになるかもしれない。
そして、人もヒグマも、もう少し違う形で向き合えるようになるかもしれない。
私はそんな可能性に期待しています。
――最後に、このプロジェクトに関心を持ってくださった皆さんへメッセージをお願いします。
(早稲田さん)
私自身、これまで長い間ヒグマと向き合いながら、多くの経験や知識を積み重ねてきました。
そして今、この先の10年、20年で、その蓄積してきたものを形にする最後の挑戦の時期に
来ているような気がしています。
もちろん、今の社会の流れを見ていて、すべてが良い方向に進んでいるとは思っていません。
だからこそ、自分たちらしい方法で何かを変えられないだろうかと考えた時に、
たどり着いたのがベアドッグでした。
私は、このベアドッグの取り組みには大きな可能性があると思っています。
ヒグマを大切にしたいと思っている人もいる。一方で、ヒグマが怖い、何とかしてほしいと
思っている人もいる。立場や考え方は違っても、ベアドッグを通じて人とヒグマの問題を
一緒に考えるきっかけを作ることができるのではないかと思います。
少しずつでもお互いが歩み寄り、理解を深めていく。
そんな未来につながる取り組みにしたいと思っています。
そして、その先に人とヒグマの双方にとって安全で安心できる地域づくりがあると信じています。
まずはこの挑戦に関心を持っていただき、応援していただけたらうれしいです。
(理事長)
正直なところ、これから先はうまくいくことばかりではないと思っています。
初めての挑戦ですから、試行錯誤もあるでしょうし、思うようにいかないこともきっと出てくるはずです。
でも、それも含めて挑戦だと思っています。
だからこそ、結果だけではなく、その過程も温かく見守っていただけたらうれしいです。
私たち自身も、この先にどんな景色が待っているのか、まだはっきりとは見えていません。
それでも、人とヒグマの新しい未来につながる一歩になると信じて進んでいきたいと思っています。
ぜひ応援をよろしくお願いいたします。
そして、私たちと一緒に、人とヒグマの新しい未来を見守っていただけたらうれしいです。
今回お話を伺い、私が最も印象に残ったのは、
「ベアドッグを導入すること」が目的ではなく、
その先にある「人とヒグマの新しい未来」を見据えていることでした。
人も、ヒグマも、そしてベアドッグも安全に。
そのために、まずはヒグマを知り、地域とつながり、
少しずつ未来を変えていこうとする皆さんの姿勢に、大きな希望を感じました。
ベアドッグが北海道でどのような可能性を見せてくれるのか。
そして、この挑戦が人とヒグマの関係にどのような変化をもたらしていくのか。
これからも一市民として、そしてベアスマートな未来を願う一人として、
温かく見守り応援していきたいと思います。
Envisionの皆様、勇気ある一歩を踏み出してくださり
ありがとうございます!
お忙しい中、interviewのご協力もありがとうございました!